畳は、日本の伝統的な床材のひとつで、障子とともに和室を象徴する存在です。畳は「畳床(たたみどこ)」「畳表(たたみおもて)」「畳縁(たたみべり)」の3つの要素で構成され、それぞれが異なる機能と役割を持っています。
- 畳床(たたみどこ):畳の芯にあたる部分で、さまざまな素材が使われます。
- 畳表(たたみおもて):畳の表面部分で、主にイ草が使われることが多いです。
- 畳縁(たたみべり):畳の長手方向の端を縁取る布地で、装飾や保護の役割を持ちます。
畳は、日本の風土や生活文化に適応し、湿度の調整、柔らかさによる快適さ、畳ならではの香りなどが特徴です。また、畳にはさまざまな種類とスタイルがあり、それぞれの地域や用途に応じて異なる素材やデザインが用いられています。
畳床の種類
稲わら畳床
「稲わら畳床」は、日本古来の伝統的な畳床で、稲のわらを原材料として使っています。
稲わらには湿気を吸収しやすい性質があり、適度な通気性も備えているため、畳床に適しています。また、抗菌効果が期待できるため、清潔な状態を保ちやすいのも特徴です。
この畳床はクッション性があり、足触りも柔らかいため、和室に馴染みやすい空間を作り出します。しかし、稲わら畳床は耐久性が比較的低く、定期的な交換が必要となることがあります。
稲わらサンドイッチ床
「稲わらサンドイッチ床」は、稲わらの畳床の両面に板を挟み込んだ構造を持つ畳床です。
稲わらの通気性や保温性を活かしながら、板を加えることで耐久性と安定性が向上しています。また、サンドイッチ構造により畳のへたりが少なくなるため、長期間使用が可能で、耐久性も高まります。
この畳床は特に高齢者や車椅子の利用者に配慮した和室での使用が推奨されますが、費用は高めです。
建材畳床
「建材畳床」は、畳床の芯材に合板や集成材などの建材を使用したタイプです。
従来の稲わらを使用した畳床に比べて耐久性に優れており、硬めであるため安定感がある反面、柔らかさや弾力は稲わら床ほどではありません。合板などの建材のため、湿気に強くカビが生えにくい特徴があり、畳のメンテナンスも比較的容易です。
住宅の和室や洋室に幅広く対応し、現代の生活スタイルにも合いやすい畳床です。
畳表(たたみおもて)とは?
畳表(たたみおもて)は、畳の上部を覆うゴザ状の部分で、畳の質感や耐久性を左右する重要な要素です。
通常はイ草を縦糸(経糸)と横糸(緯糸)で織り合わせたもので、日本の気候に適した素材として、独特の香りと感触が好まれます。また、イ草の畳表は湿度の調整機能もあり、湿気の多い時期には湿気を吸収し、乾燥する時期には放出するという特徴があります。
畳表にはいくつかの種類があり、産地や品質に応じて異なる名称がつけられています。以下に代表的なものを紹介します。
備後表
備後表は、日本国内で最高級の品質とされる畳表の一つで、広島県の備後地方で生産されています。
織り目が非常に細かく、耐摩耗性が高いため、長持ちしやすい特徴があります。色合いや質感も美しく、格式高い和室や茶室などで使用されることが多いです。
琉球表
琉球表は、イ草とは異なる七島イ草を使用した畳表です。イ草よりも硬く丈夫で、縁がないスタイルが特徴的です。
耐久性が高いため、商業施設や住宅のリビングなど人の出入りが多い場所に適しています。また、琉球表の畳はモダンな和室に合わせやすく、現代のインテリアスタイルにも人気です。
畳縁とは?
畳縁は、畳の長手方向の両端に取り付けられる布地で、主に畳の保護と装飾を兼ねています。畳縁の素材やデザインには多様性があり、格式や用途に応じて使い分けられます。
伝統的な畳縁は、畳の格式や地位を表すものでした。寝殿造りでは、身分が高い者が使用する畳には「繧繝(うんげん)模様」と呼ばれる豪華な装飾が施され、一般の庶民はシンプルなデザインの縁を使用していました。このため、畳縁には歴史的・文化的な意義が込められていると言えます。
畳縁の種類
坊主畳(縁なし畳):琉球畳に代表される、縁がないシンプルなデザインで、モダンな和室やリビングルームに人気
縁付き畳:長手方向の2辺に縁が付いている一般的な畳
片縁畳:長手方向の1辺だけに縁が付いたタイプ
畳の手入れと交換
畳は、定期的なメンテナンスと交換が必要です。畳表は使用年数が経過すると摩耗し、色が変わってきます。そこで数年に一度「裏返し」や「表替え」と呼ばれる作業が行われます。
- 裏返し:畳表の裏面を表面として再利用する作業です。表面がまだ使える状態の時に行い、一般的に3〜5年ごとに行います。
- 表替え:畳表を新しいものに張り替える作業で、10年程度を目安に行われます。張り替えによって畳の見た目や機能が蘇ります。
畳床も長期間使用すると劣化しますが、耐久性の高いものは数十年単位で使用可能です。定期的な換気や除湿を行うことで、畳を長持ちさせることができます。
現代の畳とその役割
現代では、従来の稲わら畳床に加え、建材畳床や合成素材を使用した畳も登場し、住宅の多様化に合わせてさまざまな場面で活用されています。
特に洋風住宅においても畳が採用されるケースが増え、「和モダン」スタイルの一部として畳が再評価されています。縁なし畳やカラー畳など、デザイン性を高めた畳も増えており、伝統的な和室のみならず、現代的な空間にも適応しています。
畳は、歴史的な価値とともに、現代の住宅においても重要な存在です。湿度調整、クッション性、香りなど、畳ならではの魅力が、快適で心地よい空間を提供し続けています。