アイリーン・グレイ – コルビュジェも嫉妬した名デザイナー

建築

アイリーン・グレイとは?

アイリーン・グレイ(Eileen Gray)は、アイルランド生まれの家具・インテリアデザイナーであり、建築家でもありました。彼女は、20世紀初頭のパリで、当時最も画期的なアート・ムーブメントの1つであるアール・デコ様式に大きな影響を与えました。

彼女の作品は、繊細で美しく、同時に機能的で実用的であると評価されています。特に、スチールチューブを使った家具のデザインは、現代的で先進的なものであり、彼女の作品は今でも高く評価されています。

代表作品には、チューブ状の鋼鉄フレームに革張りのシートを張った「ビブロス・チェア」、黒漆塗りの木材に、銀色のラインを施した「ドラゴン・チェア」などがあります。この「ドラゴン・チェア」は、イヴ・ サンローランのコレクションのひとつであり、2009年当時インテリア史上最高額の28億円で落札されました。

また、アイリーン・グレイは、建築家としても活躍し、フランス南部のローザンヌにある彼女自身の家「E1027」を設計しました。この家は、彼女の家具やインテリアデザインと同様に、現代的で実用的なデザインが特徴で、彼女のアート・ムーブメントへの貢献を象徴する建築物として評価されています。


E1027

フランスのコートダジュールの地に立つ「E1027」は、アイリーン・グレイが1926年に設計・建設した、自分自身の住宅兼アトリエです。

この建物は、モダニズム建築の先駆的な作品の1つとして知られており、グレイがデザインした家具やインテリアも含めて、一貫したデザインコンセプトが取り入れられています。また、壁や天井には、色や光を取り入れた彼女の独創的なデザインが採用されています。

しかし、後に建築家ル・コルビュジエによって、E1027の壁面に彼自身の壁画が描かれ、グレイのデザインを破壊するという事件が起こりました。この事件は、女性建築家に対する差別的な偏見を露呈させることになりましたが、最近ではその重要性が再評価され修復が行われるなど、世界的に注目される建築物のひとつとなっています。

出典:Casa BRUTUS

コルビュジェとの確執はあったの?

アイリーン・グレイとル・コルビュジエには確執があったといわれています。当時コルビュジエはグレイのデザインを高く評価していたように見えたものの、彼女の建築作品を評価しなかったことが知られています。

また、彼女が建設した自宅兼アトリエであるE1027に対して、ル・コルビュジエが勝手に壁画を描いたことがあり、これがグレイとの確執につながったとされています。さらに、彼女が設計した家具をル・コルビュジエが盗用したとの訴えもありました。

しかし、これらの事件が後世になって再評価され、グレイが建築史上の重要な存在であることが認められるようになりました。現在、彼女の作品は高く評価され、E1027も修復されて再び注目を浴びています。

20世紀最高値をつけた椅子

「アイリーン・グレイ」は当時としては珍しい20世紀の女性建築家であり、家具・インテリア・プロダクトデザイナーです。女性という事で評価されにくかった時代でもあり、様々な出来事が彼女の周りではありましたが、100年近くの時を待ってようやく彼女の作品が高く評価されるようになってきています。

初期のデザイン作品の椅子はオークションで、なんと2850万ドル(約30億3000万円)という値段を付けています。イヴ・サン=ローランとピエール・ベルジェの家にあった作品に高値が付いています。

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